小橋 昭彦 2001年7月4日

 おとぎ話の起源をたどっていて、舌切雀伝説発祥の地として売り出している群馬県の磯部温泉が、温泉記号の起源であることを知る。1661年のこと、付近の農民の土地争いに決着をつけるために江戸幕府から出された評決文の添付図に、磯部温泉を記した温泉マークがふたつ描かれていたという。地図記号の中でも起源が古いもののひとつだろう。
 さらに古いといえば、寺院を表す卍(まんじ)だろうか。そのルーツは古代インドにさかのぼる。インドの神ビシュヌの胸にある旋毛が起源という説もあるけれど、実際にはさらに古いらしい。
 地図記号の多くは現物のものを抽象化し、わかりやすい工夫をされている。それでも、そろばんの玉の形をもとにした税務署や、火消しが使った「さすまた」を表している消防署、天秤計りの分銅の形の銀行などは、そのうち起源が忘れられていくかもしれない。
 地図記号に限らず、ぼくたちは長い歴史の中でさまざまな記号を創造し、伝えてきた。あるものは忘れられ、あるものは形を残す。遺跡に遺された絵や記号を見ては、それを描いた人について思いをめぐらす。そこに確かに、誰かに何かを伝えようとした人が、いたのだと。

3 thoughts on “記号の起源

  1.  図面を使う事が仕事の基本である僕は、毎日記号にお世話になっている事になる。設計図の場合、図そのものや寸法よりも、材料記号や仕上げ記号、回路記号等、その他いろいろな情報を記号化して図面に記入する。
     現在はCAD・CAM化で図面を描く手間は従来より飛躍的に減少したけれど、記号を記入するのはやはり人間である。(記入自体はCAD化されてはいるが)
     さらに、その記号をCAMデータに変換しているけれど、設計の意図がはたして正確に伝達されるか、そこでCADシステムの評価が決まってくるようだ。

  2. 初めて迷い込みましたが、世の中には知的好奇心のか
    たまりみたいな人がいらっしゃるんですね!感動で
    す。

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