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副題で読み解く雑学的ブック・レビュー

今、地方で何が起こっているか―崩壊と再生の現場から

 朝日新聞紙上での連載をもとにまとめた書籍。

 いま、地域を語るときに典型的に語られる二つの町がある。
 夕張市と上勝町だ。「崩壊の現場」としての夕張市と、「再生の現場」としての上勝町。
 この書籍もまた、ふたつの自治体をつないで語られる。

 まずは全体像を振り返っておこう。
 切り口は5つ。

 限界集落をテーマにした、高知県大豊町での取材。過疎地の老人を安価に医療機関に送迎するサービスを無許可で行っていたために逮捕された男性と、それを嘆く住民たちから、話が書き起こされる。たんねんな取材から拾われたリアルな現場の事実。
 国保滞納をテーマにした、大阪府門真市での取材。
 そして、自治体破綻をテーマにした北海道夕張市と、葉っぱビジネスが町を元気にした徳島県上勝町。
 最後に、透明な議会をテーマにした章が続く。

 上勝町の事例は、確かに出色の成功事例だ。

 徳島県の南西約20キロ。人口は約2000人。総面積110平方キロメートル、林野が9割。林業とミカンが主産業だったこの町に、「つまもの」ビジネスを起こした営農指導員だった横石さん。
 86年秋に着想し、まずは4軒からスタートする。葉っぱといっても、単に拾っただけではダメ、料亭で使われるシーンを考え、喜ばれる葉を選ぶ。料亭で実地見学をして、目を磨く。初年度86年の年間売上は116万円、88年度に2160万円、94年度に1億円を突破。

 今、上勝町ではおじいちゃんおばあちゃんが元気だ。それぞれの売上への競争心が、よい循環を生んでいる。そのことを明確に指摘している。ともすれば「みんなで仲良く」取り組みましょうとなりがちな「地域おこし」に対する、考えさせられる指摘だ。
 競争の原理が地方を疲弊させた。しかし、競争の原理にも使い道はある。

 しかし、それも魔法の杖ではない。産業おこしや、高齢福祉にはなっても、地域の未来を切り拓くにはまだ遠い。
 少子高齢化はこの町も襲う。
 そうしたなか、上勝町はこの20年で130人(人口の約6%)あまりの移住者(U・Iターン)を受け入れてきた。この比率は、一般の自治体に比べると多いという。うち85人がIターンだ。
 しかし、挑戦はこれからだ、という浮ついていない指摘に好感がもてる。

 でも、どんな挑戦がありうるのだろう。上勝町でさえ、という見方もできる。
 ひとつの職を起こすだけでは難しい。いくつもの職が、同時多発的に起こらなくてはならない。いや、なにより農地を継ぐ「職」が必要。

 絶えず挑戦しつづける姿勢に、地方の未来がある。
 そんな言葉がみえる。しかし、挑戦し続けるのが、地方だけでは、この国の将来がないこともまた、本書を通して見えてくる。

by 小橋昭彦 : 08年06月12日

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