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ちょっとサイエンスな雑学を人生にひきつけて考えるコラム集

スケールフリー

 まちおこしの目的をわかりやすく表現するのは難しい。それでつい「田舎に向かう人を増やしたい」なんて単純化して言ってしまうのだけれど、ある会合で友人が「都市規模にはジップの法則があって、田舎の人口は増やせない」と指摘するのを聞いていて、それはそうだけれどと複雑な気持ちになった。
 ジップの法則というのは、単語の出現頻度について述べたもの。頻度が2番目の単語は1番目の2分の1の、3番目は3分の1の確率で現れる。べき乗分布になることから、べき法則と一般化される。都市規模の分布もこれに従うから、都市間格差は前提で、くつがえせないのではというわけだ。
 ややこしいので例え話にしてみよう。百点満点の試験を考える。横軸に得点、縦軸に人数をとってグラフにすると、50点付近の人が多くて山を作り、零点や百点に近い人は少ない釣鐘形になる。50点の人が代表的ということだ。ところが、知っている友だちが一人なら1点、二人なら2点としてグラフにすると、「U」の左半分とでもいおうか、圧倒的多数は点数が低いけれど、高い人はいくらでも高い図になる。友達の例は検証が必要だが、こうした巾の広いスケールフリーな分布は、地震の規模と発生回数から戦争の数と死亡者数までさまざまなところに現れる。
 スケールフリーな世界では、代表的というのは存在しない。どの一点をとってもそれより上があり、下もある。これを都市に置き換えるなら、あのくらいを目指そうと言う標準がないと考えてもいい。だとすればこの世界での処世法は、自分の中に審級を作るほかない。自分を知り、自らの特徴を磨くこと。
 都市から田舎に向かう人を増やしたいと言ったときぼくの念頭にあったのは、こうした内なる思いだった。ある人が自分の居住地を選ぶとき、職場の関係で都市に限定されるというのではなく、田舎でもいいんだと、そういう可能性の多様さを作ること。ある点が多様な紐帯を持つことは、ネットワーク的にも狭い世界をもたらすのではなかったか。

by 小橋昭彦 : 04年11月04日

小橋昭彦 on 2004年11月04日 09:25

今回、すこしややこしい話ですみません。スケールフリーという言葉は、代表的なものがあるランダムネットワークと対照して生まれたもので、本来はネットワークとからめて書きたかったのですが、そこまでいかず。なお、過去のコラム「1から始まる [2004.05.20]」「地球の果てまで6人 [2003.08.14] 」「パーコレーション [2003.08.18]」をあわせてご参照ください。

ジップの法則については「ジップの法則」の解説がていねいです。それを都市にあてはめて検証した論文として、「都市の規模や勢力の分布に関する考察及びベキ指数を用いた都市圏集積度分析手法の提案」をどうぞ。そこから社会、地域への落としこみとして、やはりグローコムの「ベキ法則と民主主義」「新しい地域発展論−ベキ法則下での地域の生き方」を参照ください。特に後者は、今回のコラムの主旨と重なっています。

さて、スケールフリーネットワークなど、ネットワーク理論については「Study of Self-Organized Networks」に各種論文等、情報豊富です。その主催者バラバシによる「世界の“なぜ”を読み解くスケールフリーネットワーク」及び著書『新ネットワーク思考』そしてべき分布を歴史的に追った『歴史の方程式』を参考にどうぞ。

なお、最後の部分はスモールワールドネットワークを念頭に置いた一文で、前述の過去のコラムで紹介していますが、近刊として『スモールワールド・ネットワーク?世界を知るための新科学的思考法』が出ていますね。

ヨッシー on 2004年11月04日 13:28

スケールフリー。
リンクは伝っていませんが、世帯毎の預金高も同じですね。御役人の出してる平均残高も誤魔化し?だったのでしょうか。

栗田 仁 on 2004年11月04日 14:14

いつも配信ありがとうございます。

今回の配信の説明中、
「ところが、知っている友だちが一人なら1点、二人なら2点としてグラフにすると、「U」の左半分とでもいおうか、圧倒的多数は点数が低いけれど、高い人はいくらでも高い図になる。」の部分、どういうことなのかさっぱりわかりません。
 この前のパラグラフはよくわかります。
お忙しいところ恐縮ですが、次号で解説をおねがいできれば・・・・・。

末筆ながら、益々のご活躍とご自愛のほどお祈り申し上げます。

小橋昭彦 on 2004年11月04日 22:01

栗田さん、ありがとうございます。ええと、パラグラフのうちどの部分でしょうか、どういう図になるかがわかりにくいということでよろしいでしょうか。

この部分、数学的表現を避ければ、なんと表現すればいいのか苦労したところで、要するに、下記リンクの文章にある、「図1」のようなグラフのことを言いたかったのです。

http://www.can.or.jp/archives/articles/20030315-01/

……で答えになりましたでしょうか。

しゃあ on 2004年11月06日 08:23

まちおこしってなんだろう?経済的に豊かになる事かな。とすると「田舎に向かう人を増やす」は分かるのですが「人口を増やす」は少し違う気がする。
自分の中で審級が確立出来るなら 自ずと「田舎でもいい」となるだろうが それなら「まちおこし」とハリキルことも ないかも。結局 小橋さんのおっしゃりたいのは「可能性の多様さを持ちつつも 己を見失わないこと。」と理解したつもりですが如何でしょう。
ちょっと 本題からそれたかも 知れませんが。

小橋昭彦 on 2004年11月06日 10:12

しゃあさんと同じ問題意識を持っています。人口を増やしたり経済規模を拡大するのは古い意味でのまちおこしなので、そうではなく、ぼくとしては「田舎のままでいい」というのが基本にあります。ただ、それは「今のままでいい」にはつながらないんです。

なぜって、ぼくたちの言う「田舎」というのは「自然」ではなく、「人と自然が仲良くしている里山環境」なわけです。「今のまま=衰退していくまま」だと人の姿は消え、里山は失われます。それを防ぐには、里山に住み続ける可能性を保たなくてはいけない。そうした可能性を再発見し、再創造することが「まちおこし」になります。

一方、里山が失われてしまうと、現在の都市に住む人たちにとって「田舎に移住する」という選択肢がなくなってしまいます。そういう視点から述べているのが、世の中全体の多様性を保っていきたいという主旨。この場合は「まちおこし」というよりむしろ「くにおこし」とでもいったニュアンスに近いのではと思います。

しゃあ on 2004年11月07日 18:54

栗田さんへの回答として・・へリンクしてみましたがレベルの高さに驚きました。まぁボク自身三流大学の五流学生だったのでいたし方ないのですが・・。
場違いな処へコメント投稿してしまった自分を恥ずかしく思います。スミマセン。

えふ on 2004年11月08日 14:21

今更ながらに普通に人口も増えて、経済規模も増加している田舎に住んでいます。遅れてきた高度成長の国のようです。良いことと悪いことが混在して生活しています。トヨタ城下町ということもあるにはありますが。
コラムを拝見して思ったのは、ジップ則とか学者さんが言う理論は、腐るほど例外もあるってことです。今目の前に起きている現象を見て、GLOCOM等で良く議題になる都市に関してのジップ側に逆らう事自体は、さほど難しいことではないと思っています。でも、ジップ側に逆らった発展は、単なる都会化ですし、里山を減らして行くことは間違えありません。
おっしゃるように、ジップ則に固執するのではなく、新しい、地域の強弱(個性)を計る評価基準こそが求められているように思います。その基準も、それはそれで、ある種のジップ側とか、ネットワーク理論に即してしまうのかも知れませんが。

小橋昭彦 on 2004年11月09日 19:44

ん? しゃあさん、場違いとかそういうことはまったくないので、お気になさらないでください。もしそう感じさせてしまったとしたら、そう感じさせてしまったぼくに責任があります。しゃあさんの投稿から多くを学ぶことができています。

えふさん、先日はほんの短い挨拶しかできなくてごめんなさい。そうなんですよね、数学と違って社会学的なことって、例外がありますよね。だから大切なことは、おっしゃるように学説そのものが正しいかどうかに固執するのではなく、それが新しい視点や可能性を生むかどうかなのかなあと思っています。

sansara on 2004年11月10日 17:41


米国の黒人解放運動指導者W. E. B. Du Boisが
著書The Souls of Black Folk『黒人の魂』(1903)
の中で唱えた理論、
『talented tenth』 を思い出しました。

どのような集団でもそのうちの10%は知的で創造的
であり,残りの90%の人々を代表することができる
という考え方です。

白人にも黒人にもこの割合で優れた人間がいる、という
主張が100年前にしてはすごい、のと

残り90%が駄目、というのでなく、
「残りの90%の人々を代表することができる」とする
ところが、思考の深さを感じます。

そしてそれは、「可能性の多様さを作ること」という
小橋さんの思考に通じる何かが、あるようにも思います。

佐藤と申します。 on 2005年07月18日 16:31

ネットワーク理論について詳しく教えて下さい。宜しくお願い致します。

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