小橋 昭彦 2001年3月30日

 グローバル化の進む天気予報の世界。現在では、10の気象衛星、約4000の観測所、約7000隻の船などからの情報が、専用の通信システムを通して毎日配信され、各国で共有されている(朝日3月3日)。気象庁が1日に収集する情報量はおよそ50メガバイト。
 もっとも、それをもとにした予報の精度は各国の数値予報モデルやスーパーコンピュータの性能により差がある。数値予報というのは、大気をさいころ状に切り、それぞれの状態をもとに気象を予報するもの。サイコロの一辺が小さいほど正確な予報ができるのだが、その分計算量も膨大になり、明日の予報をする計算に一日かかり予報の意味をなさない、なんてことになってしまうので、おのずとコンピュータの性能に制限される。
 北半球全体の予想天気図の精度では、欧米諸国に遅れをとっている日本だけれど、台風の進路予報では、世界のトップに立ったという。国際比較したのは米国海軍研究所で、昨年北西太平洋で発生した23個の台風の予想中心位置と実際の進路との誤差を比べたもの。
 台風の予報は、いくらモデルの格子間隔が小さくなっても、初期にどのようなデータを与えるかで予測値が違ってくる。初期の台風の様子を正確に観測できる技術はまだなく、ボーガスと呼ばれる擬似データをあてはめるしかない。ボーガスは、過去の研究成果をもとにした典型的な数値があてられる。気象庁のそれが優秀だったということでもあるだろう。
 2001年3月から気象庁に新しいスーパーコンピュータシステムが導入され、台風の進路予報についてもさらなる改善が期待されている。大自然を前にした人とコンピュータのこんな共同作業を思うと、テクノロジーの可能性ってまだあるんだな、とあらためて気づかされる。

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