小橋 昭彦 2018年10月12日

退屈な10億年と呼ぶそうだ。およそ18億年前から8億年前に至るまでの地球のこと。
なぜかといえば、その間、地球にとって大きなイベントが起こらなかったから。

それに先立つ時代には、光合成をおこなうシアノバクテリアが登場して地球上の酸素濃度がどんどん高まった。大酸化イベントと言われる。
そのさらに前は地球全体が凍っていた。時代が変わり、大陸から多量の栄養源が海に送られた結果がシアノバクテリアの発生につながったという。

このほど東邦大学らの研究チームが明らかにした、退屈な10億年の様子はこうだ。
海洋は栄養不足に陥っていた。そのために光合成をおこなう生命が繁栄できず、地球の酸素濃度も、現在の数%以下にとどまっていた。いわば飢えと酸欠の時代だったという。
原因は分からない。ともあれ、10億年が暮れ、酸素濃度が再び上昇を始める。生命はより複雑な多細胞生物に進化し、にぎやかな時代が訪れる。

その後、地球はまた全球凍結になったり、巨大大陸が分裂したり、地球内部のマントルがスーパープルームと呼ばれる巨大な動きをしたり。そして生命はこの5億年で多様化する一方で5度の大絶滅を繰り返す。大きなイベントの連続。

そして今、生命は6度目の絶滅期に入っているという。数年前に発表された論文によれば、通常の100倍のペースで生物種が失われているとか。その原因は人類が起こしている。

退屈な10億年は、地球が安定していた時期でもある。地球温暖化が影響しているともいわれる昨今の異常気象を目のあたりにすると、10億年の平凡な日々が、貴く思える。秋晴れの一日、穏やかな空と山を眺めながら、変わりない日々の価値に思いをはせる。

1 thought on “退屈な10億年

  1. 東邦大学の研究結果は、『“退屈な10億年”は飢えと酸欠の時代だった』をどうぞ。

    全球凍結の後の大酸化イベントについては、東京大学による『酸素は地球にいつどのように登場したのか-酸素大気形成のタイミングとメカニズムを解明-』をどうぞ。

    地球が6回目の大量絶滅機にあるという論文は、『Accelerated modern human–induced species losses: Entering the sixth mass extinction』ですが、日本語の『地球は6回目の大量絶滅期』が分かりやすいです。

    もっとも、この論文以前から、たとえば『Has the Earth’s sixth mass extinction already arrived?』(日本語『生態:地球の6回目の大量絶滅はすでに始まっているのか』)のように、そうした問題意識は持たれていました。

    大量絶滅は、次の進化のきっかけでもあります。そのあたり生命誌ジャーナルの記事『大量絶滅 生物進化の加速装置』をどうぞ。

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