小橋 昭彦 2001年7月6日

 立ち寄った土産物屋に万華鏡が並んでいた。さっそく3歳の息子に覗かせる。「きれいやろ」「きれい」。言いながら、すぐ棚に返している。あんがい感動が少ない。
 万華鏡はイギリスが発祥地。イギリスの物理学者ブルースターが1816年に発明、特許を申請している。なんでも灯台の光を遠くまで届かせる構造を考えているうちに作ってしまったとか。
 カレイドスコープという名前も、このときブルースターが考えたもので、ギリシア語をもとにした「美しい形を見るもの」という意味の造語だ。確かに、その美しい模様は見るものの息をのませる。
 土産物屋に並ぶのは3枚鏡の万華鏡が一般的だが、鏡の構造としてはほかにも2枚鏡や4枚鏡などもある。2枚鏡の場合、あと一辺は黒紙などで反射をおさえておく。鏡の角度を45度であわせれば四芒星、30度なら六芒星と、あわせ方で形が決まる。どんな「具」を入れるか、それをどのような鏡の組み合わせで見せるかが、万華鏡作家の腕の見せ所だ。
 日本で万華鏡が最初のブームを迎えたのは1891(明治24)年から翌年にかけてのこと。製作そのものは1819年には日本でもなされていたと記述に残っており、発明からはや3年で日本にも伝わっていた様子がわかる。それほど、世界の人の心をとらえたのだろう。
 土産物屋から食事をしての帰り道、すっかり日は落ち、空には月と火星が並んで輝いている。ときにそれを見上げ、ゆっくり歩いて帰るひととき、家のそばで、息子がひとこと「お月さん、ここまでついてきたねえ。ぼくのこと好きなのかなあ」。そうか、彼にとっては手にして覗き込む小さな空間ではなく、この世界そのものが万華鏡なのだ。

3 thoughts on “万華鏡

  1. 6歳になる娘はお月様が好き。お星様も好き。自分だけについてきてくれるから。自分にだけ分かる言葉で話しかけてくれるから。彼女は万華鏡も好き。くるくる回る華麗な映像は、いま覗いている自分だけの物だから。万華鏡に広がる世界は、手にして覗いている瞬間は、彼女だけの物だから・・・
    大いなる世界に目をむける遼太朗君。内なる世界で自在に遊ぶ娘。なんだかとても嬉しい。

  2. 子どものおもちゃ売り場や土産物品店で、必ず見つけたら手にしてみるもの、それが「万華鏡」です。
    中を覗いて見ずにはいられない。
    幼いころに覗いた万華鏡の世界をもう一度味わいたくて。
    けれど、いつもがっかりさせられる。
    いわゆる「具」が良くないのです。
    (ああ、また違った・・・。)
    今のはプラスチック製の物が多くて、変化が単純すぎ、面白みに欠けます。
    それでも店先で見つける度、懲りずに手を伸ばす私です。

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